人気ブログランキング | 話題のタグを見る

東方儚月抄外伝 八雲紫と綿月豊姫の入れ替わり   

2009年 02月 16日

東方儚月抄外伝
八雲紫と綿月豊姫の入れ替わり



この話は東方儚月抄第十九話「縛られた大地の神」のネタバレがあります。
儚月抄第十九話「縛られた大地の神」の中のワンシーンを元にして書いているので、リアルタイムにコミックREXを買って読んでいる人でないと訳が分からないと思います。




ネタバレがあったも構わない!という方は下↓へ。













地上の妖怪・八雲紫は自分の式である八雲藍を連れて月に進入を果たした。
しかし月の都を守護する綿月姉妹の姉・綿月豊姫は紫の行動を先読みし、罠を仕掛け、紫と藍の二人を地上の幻想郷に戻るよう誘導。ついに、豊姫は紫と藍を捕獲することに成功した。

紫と藍は地面に座らされ、その状態で後ろ手に縛られている。
二人とも、特に紫は機嫌の悪そうな顔をしている。
紫は幻想郷では力のある妖怪として知れ渡っているので、こうして拘束され身動きもできない状態にされているのはさぞかし屈辱であろう。

「ちょっと、そこの貴女」
「あら、なにかしら?負け惜しみが言い足りないのなら、後でゆっくり聞いてあげるわ。今から月ロケットで来た貴女のお仲間さん達のところへ行って、地上へ送り変えさないといけないんだから」
「月まで来た手土産に、貴女の名前が知りたいわ。私は八雲紫。こちらは私の式神で、八雲藍」
「ああ、そういえばまだ名乗ってなかったわね。私は綿月豊姫。こっちの兎はペットのレイセンよ」
「豊姫・・・ね。ふふ、月人様からお名前を聞かせていただけるなんて、とてもありがたいわね。礼を言うわ」

豊姫は持っていた扇子を口元に当て、くす、と笑った。

「いえいえ、感謝には及びませんわ。貴女達にも、もう会うことはないでしょうし。ロケットの連中を送り返したら、貴女達も元の場所に返してあげるわ。これに懲りたら、もう二度と月を攻めようとは思わないことね」
「そうね、こんな風に縄で縛られるなんて、もう御免だしね」
「いいのですか紫様!?このままおめおめと負けを認めるなんて・・・」
「いいのよ、藍。私達は負けたのよ」
「紫様・・・」
藍は自分の主人の顔を、なんともいえない悲しい表情でみつめている。

「それじゃあ、少しの間、ここを離れるけど、妙な考えは起こさないでね。・・・といっても、そのフェムトファイバーの組紐で縛られている貴女達では、何もしようがないでしょうけどね」
「ねぇ、ちょっと待ってよ、月のお姫様」
「なに、まだなにかあるの?」
「紐で縛られて、手首が痛いのよ。足首もちょっときついわ、跡が残ったらどうしてくれるのよ。紐を少しゆるめてくれない?」
「ふう、さっきも言ったけど、それはできないわ。月へ侵入しようとした重罪人に対する情けなんか、無いわ。その痛みを教訓として、心に刻み込んでおくことね」
「あらそう、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・紐をゆるめてくれていたら、少しは自分が痛い思いをしなくてすんだのに」
「?今なにか言いましたか?」
「いえ、別に」

紫は縄で拘束されながらも、上から見下ろす豊姫に対して、ニヤニヤと妖しい笑みを浮かべたままだ。

「・・・・・」

豊姫は紫のそんな態度を見ても、特に怒りを感じたりもしなかった。
もう相手には為す術もないのだ。絶対的勝者である自分にとって、敗者がどんな表情でどんな言動をしていようが、まったく気にならなかった。

「とにかく、痛いのがいやなら、おとなしくじっとしていることね。レイセン、行くわよ」

豊姫がレイセンのほうへ振り返り、紫に背中を見せ、立ち去ろうとした瞬間。

ドガッ。

豊姫は背中に強い衝撃を受けた。
紫が縄で縛られた状態で立ち上がり、そのまま豊姫に体当たりしてきたのだ。
思わず紫のほうを振り向いた豊姫だったが、不意打ちだったため、意識が飛びそうになる。
豊姫が、その名のとおり紫色の瞳の紫の目を捕らえたあと、世界が真っ白になった。






「う、うーん」

「豊姫様!豊姫様!大丈夫ですか!?」

レイセンの、自分を心配する声がする。

どうやら一瞬意識が飛んでしまっていたようだ。
あの地上の妖怪・・・
縄で縛っていたから、油断していた。
縄は手首と足首を縛っているだけのため、あのように少しの間だけなら動くことができる。
最後のあがきにしては、ずいぶん単純なことをする・・・

そこまで思った後、豊姫の身体に感覚が戻ってくる。
レイセンの、自分を呼ぶ声もはっきりと聞こえてくる。

「豊姫様、豊姫様ーー!ケガはないですか!?」

ええ、私は大丈夫よーーーー

そう、豊姫が返事をしようとしたとき。

「ええ、私は大丈夫よ」

聞き覚えのある声が、自分の代わりにレイセンに返事をした。

「・・・・え?」

その奇妙な事態に、豊姫は思わず変な声をあげていた。
その、自分が発した声も、やけに聞き覚えのある声だった。

「ぶつかった衝撃で、ちょっと意識が飛びかけただけよ、心配いらないわ」
「ああ、よかった、豊姫様!」

豊姫の目の前で、豊姫の姿をした者が、レイセンによって安堵の声をかけられていた。

「なっ・・・!わ、私!?」

「まったく、地上の生き物は穢れが多いだけでなく野蛮でもあるようね。いきなり体当たりしてくるなんて」

「ちょっと待って・・・あなた、誰?どうして、私がそこに!?」
「誰って、さっき名乗ったでしょう?私は綿月豊姫。そして貴女は八雲紫。自分の名前も忘れてしまったのかしら?」

目の前の豊姫の姿をした者は、しゃがみこみ、豊姫の耳元付近でささやくようにつぶやいた。

「ふふ、地上の妖怪の身体になった気分はどう?綿月豊姫様」
「や、やっぱり、まさかあなたや・・・んぐっ」

豊姫は、いや豊姫の姿をした八雲紫は、八雲紫の姿をした豊姫の口を片手で強引にふさいだ。
そして再び、周りのレイセンや藍に聞こえない程度の小さな声でつぶやいてみせる。

「そうよ、私と貴女の身体を入れ替えさせてもらったわ。私の境界を操る能力を使って・・・あなたと私の、心と身体の境界をいじらせてもらった。私は綿月豊姫になり、あなたは八雲紫になった。ふふ、理解できたかしら?月のお姫様。いえ、今はただの穢れた地上の妖怪ね」
「んごんご・・・(そんな・・・いつの間に)」
「さっき、体当たりしたときにね。境界を操るには、できるだけ接近しておいたほうがいいのよ。さて、おしゃべりはここまでよ。貴女の、月のリーダーとしてのこの身体を使って、ちょっといろいろさせてもらうわよ」

そう言うと紫は、いや豊姫は紫の口をおさえていた手を離し、立ち上がった。

「ちょっと時間をかけすぎてしまったわね。レイセン、行くわよ」
「は、はい、豊姫様!」

「ちょ、ちょっと待ちなさい・・・きゃあ!」

紫は慌てて豊姫を追いかけようとするが、立ち上がろうとして転んでしまった。

「あらあら、縄で縛られているのを忘れたの?」
「ううっ・・・レイセン、そこにいる私は私じゃありません!今すぐ捕まえなさい!」

「えっ・・・あの、豊姫様」
「なに?」
「あそこの妖怪がなにか変なこと言ってるんですが・・・どうしたらいいでしょうか?」
「無視しなさい。これ以上関わっても、穢れを移されるだけよ」
「そ、そうですね」


「ちょ、ちょっと待ちなさい!私が本物の豊姫よ!」
「さあ、妹が待っているところへ行きましょうか」
「ええ、豊姫様」
「紫様ー、落ち着いてくださいよ~」


豊姫はレイセンを連れ、空間に裂け目を作り、その中へと消えていった。
あとには、縄で拘束されたままの八雲紫と八雲藍が残された。

「このままじゃ・・・月の都が危ないわ・・・どうすればいいの・・・!?」
八雲紫が、悲痛な表情で、綿月豊姫とレイセンが消えた空間をみつめ続けていた。

by tohotoho2 | 2009-02-16 23:42 | 東方入れ替わり小説

<< 東方妖々夢体験版をプレイしてみた 八雲紫と風見幽香の入れ替わり >>