第2話「身体を入れ替えられた十六夜咲夜」
2009年 01月 29日
永遠亭急襲!!~蓬莱山輝夜を抹殺せよ~
第2話「身体を入れ替えられた十六夜咲夜」
「しまった、肝心な物を忘れていた」
永遠亭に向かって飛行中だった玉兎は、急になにかを思い出して反転し、咲夜のところへと戻った。
「たしかこのへんに落ちたはず・・・む、あそこか」
地面に、ウサ耳をつけた男が倒れているのが見える。
今は十六夜咲夜が玉兎の身体で、玉兎が十六夜咲夜の身体になっている。
玉兎のボディチェンジは、お互いの心と身体を入れ替えてしまう能力なのだ。
咲夜は地面に墜落したが、命は取り留めたらしい。気絶はしているが、息はあるようだ。身体はボロボロで、あちこちから血が流れている。
玉兎はそんな咲夜の様子には気にもとめず、咲夜の、玉兎の身体のズボンのポケットから、1つの携帯電話を取り出した。
「ふう、これが無ければ仲間と連絡が取れないからな」
「我、十六夜咲夜の身体を乗っ取った。蓬莱山輝夜は永遠亭にあり。場所は迷いの竹林○○地点。我もすぐに向かう・・・と」
玉兎は咲夜のしなやかな手で、すばやくメールを打ち、玉兎の仲間に向かってメールを送信した。
「これでよし。さて、永遠亭に向かう前に・・・くくく、少しこの身体を楽しませてもらうとしよう」
玉兎は今や自分のものとなった十六夜咲夜の手で、咲夜の胸をわしづかみにし、揉み始めた。
「うっ・・・はぁ、気持ちいい・・・これが女のおっぱいか」
誰もいない荒野で、メイド長が痴態を繰り広げ始めた。
胸の柔らかい感触をたっぷり楽しんだ後、玉兎はメイド服のスカートをめくり上げた。
「くくく、では次は女の子の大事な部分を触らせてもらうとしようか・・・」
玉兎が咲夜の手で、咲夜の白いレースのパンティの中に手を入れようとしたそのとき。
「あら咲夜、こんなところで何をしているの?」
満月を背負い、十六夜咲夜の主君にして紅魔館の主、レミリア・スカーレットがそこに居た。
「れ、レミリア・スカーレット・・・!じゃなかった、お、お嬢様」
玉兎は突然現れた吸血鬼の名前を呼び捨てにしてしまいそうになったが、急いで咲夜の記憶を読み、咲夜が普段レミリアを呼んでいる呼び名を口にした。
「そこに倒れているボロボロの男は誰?ただごとじゃないわね。なにがあったか私に説明してくれる?」
(ちっ・・・面倒な奴が現れたな・・・でも今俺は十六夜咲夜なんだ。能力も使えるし記憶も読める。俺に不利な要素はない・・・)
「はい、お嬢様。実はこの者は月の兎で・・・」
玉兎はあくまで咲夜の振りをしながら、レミリアに事情を説明した。
「ふーんそうなの。私も興味わいてきたわ。咲夜、この男を連れ帰って、いろいろ吐かせなさい」
「えっ!で、でもわざわざそんなことしなくても・・・」
「なによ咲夜、なにが不都合でもあるの?」
「い、いえ・・・わ、分かりました」
(ちっ、まぁいい。十六夜咲夜の能力をもってすれば、レミリア・スカーレットだって倒せるはずだ。スキをみて、息の根をとめてやる・・・)
数々の異変を解決した紅魔館のメイド長の勇名は月にまで届いていた。そのメイド長・十六夜咲夜の身体を得たことで、玉兎は気が大きくなっていた。
あと、オナニーを中止させられた欲求不満を晴らしたい、という思いもあるようだ。
咲夜とレミリアは共に紅魔館に着いた。
門の前には美鈴が立っている。
咲夜は背中に背負っていた男・玉兎を地面におろした。
「お嬢様、咲夜さん、お帰りなさい!ところで誰です?この男」
「月の連中の一人よ。あの蓬莱山輝夜を狙っていたみたいね。ま、私がやっつけたけど」
「ふーん、そうなんですか」
美鈴はじろじろと、玉兎と咲夜を交互に見た。
「後で拷問して吐かせるから、地下の牢屋にでも入れておいて頂戴」
「わっかりました!よいしょっと」
美鈴は元気よく返事すると、軽々と男を背負い、館の中へと入っていった。
(くくく、その男がお前達の仲間の十六夜咲夜だとは知らずに・・・つくづく、地上の者はバカぞろいだな)
「咲夜、夜のお散歩をしていて疲れたわ。私についてきて、紅茶を入れてちょうだい」
「は、はいお嬢様」
咲夜の身体の玉兎も、レミリアに続いて館に入っていった。
(しかし、この吸血鬼。全然スキを見せないな。自分の従者相手なら、もっと警戒心を解いていいはず・・・俺が咲夜ではないと気づいているのか!?いや、まさかこんなガキに俺のボディチェンジがばれるはずがない・・・)
玉兎は背中を見せながらも、全くスキを見せないレミリアに対し、少し焦りの心を抱いていた。
(よし、こうなったら紅茶に毒でも入れてやるか・・・)
レミリアと咲夜は一緒にレミリアの私室に入った。
「それではお嬢様、紅茶を入れてまいります」
そういって玉兎は部屋を出ていこうとした。
「その必要はないわ、月の兎」
「え・・・!?な、なにをおっしゃっているのですか?月の兎は美鈴が地下牢に・・・」
「私と咲夜が何年一緒にいると思ってるの。もうその猿芝居も見飽きたわ、正体を表しなさい」
「ちっ・・・!ばれていたとはな。しかし残念だったな、俺のこの身体は正真正銘、お前達の十六夜咲夜のものだ。俺を殺せば、十六夜咲夜は元の身体に戻ることはできないぞ」
正体がばれて一瞬玉兎は焦ったが、すぐに勝ち誇った表情に変わった。
「くくく、俺を殺せまい。俺を殺せば、お前達の咲夜は一生俺の男の身体で生きるはめになるがな」
「おしゃべりな男は嫌いよ。フラン・・・あなたの出番よ」
「はーい、お姉様、呼んだ?」
レミリアに呼ばれ、悪魔の妹、フランドール・スカーレットが部屋に入ってきた。
「むっ、お前はこいつの妹か・・・しかし、誰がこようが俺のこの身体に手出しは・・・」
「お姉様、こいつを壊しちゃえばいいんだよね?」
「ええ、そうよ」
「じゃあ、壊すね。バイバイ」
「へっ・・・」
玉兎は、十六夜咲夜の声で、一瞬、間抜けな声をあげた。それが彼の最期の言葉だった。
グシャ。
玉兎の精神は、十六夜咲夜の身体の中で、跡形もなく破壊された。
あらゆるものを破壊する能力を持つ、フランドール・スカーレットの手によって。
精神を無くした十六夜咲夜の身体は、糸が切れた人形のように、バタンと床に倒れた。
「これでいいんだよね?お姉様」
「ええ、上出来よ、フラン」
「お嬢様ーー!咲夜さんを連れて来ました!」
そこへ、全身包帯だらけの男・玉兎を背負った美鈴が入ってきた。
「けがは見た目ほどひどくはないみたいです、私の気でできるだけ治しておきました」
「美鈴ありがとう。あなた、入れ替わりに気づいていたのね」
「ええ、だって、咲夜さんの気が全然違うんですもの。ああ、別人だなって、分かりました。
「お嬢様、妹様、すみません、ご迷惑をおかけしてしまって・・・」
「いいよー、べつに。久々にモノを壊せて楽しかったし」
「奪われた従者の身体を取り戻してあげるぐらい、主のつとめとしては簡単なことよ」
「ありがとうございます。ですがお嬢様、せっかく私の身体を取り戻していただいたのですが、その、元に戻る方法が・・・」
「今、パチュリーに調べさせてるわ。図書館のどこかには、元の身体に戻る方法が載ってる本があるでしょ。どうしてもみつからなかったら、あのスキマ妖怪に頭下げて頼んでみるわ。あのスキマ妖怪なら、精神と身体の境界を操って元に戻すことぐらい簡単でしょう」
「ですが、それではお嬢様があのスキマ妖怪に貸しを作ってしまいます」
「だから、あなたは気にしなくていいんだって。それらも含めて、主の仕事よ」
「ありがとうございます、お嬢様・・・みんな・・・!」
「ふう、なんだか騒がしい夜になっちゃったわね・・・まだ、なにか起こりそうな予感がするわ」
レミリアは館のベランダから永遠亭がある竹林のほうをみつめながら、一人つぶやいた。
by tohotoho2 | 2009-01-29 04:32 | 東方入れ替わり小説