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東方創想話 作品集61 「監督」様 『愚者から愚者への贈り物』   

2009年 05月 10日

東方創想話
作品集61
『愚者から愚者への贈り物』
作者「監督」





感想は下↓にあります。




感想。

霊夢とか幻想郷とか、東方であることを示すような固有名詞が全く出てこない、というかなりの異色作。
異色作ではあるものの話のほうはストレートに分かりやすく、人と妖怪の男女の悲恋を描ききったものになっています。

切ないぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!
バッドエンドに終わってしまったからこそ胸に響く!!
ってゆうか、もっと早い段階からお互いに好きだと気づいて告白して一緒になっていればこんなことにはならなかったのにーー!と、違う結末をも望んでしまいます。
しかしここでハッピーエンドで終わってしまうとただのいい話なので、やはり悲恋に終わってしまったからこそいいのかな、この話は。


終盤に猟師の男が妖怪の娘になにか告白するシーンがあります。
話の語り部である妖怪の娘がそのことについて伏せているので、具体的に何て言ったかまでは分かりません。
でもまぁ、やっぱり、「お前が好きだ」とか「一緒になりたい」とか、そういう感じの愛の告白なんでしょうね。
この、猟師の男からの告白を、自分を退治しに来た巫女(霊夢?)にはあえて言わず、自分の胸にしまっておこうとする妖怪の娘がむちゃ純情でいじらしい。

猟師の男が妖怪の娘に「なんで妖怪に生まれたんだ」と問いかけるところとか、最後の自分の身を犠牲にするところとか、運命のすれ違いというか、あともうちょっと、なにかしらの運がよければ2人ともうまくいくのに……とか、このもどかしさがなんともいえません。

妖怪の娘も猟師の男も完全なオリジナルキャラなのですが、むちゃくちゃ感情移入できます。
妖怪の娘が、猟師の小指を食べてそれだけで胸いっぱいになるシーンとか、巫女が去った後に妖怪の娘が最後の最後で「あなた」と、せめて言葉の上だけでもあの男のことを夫として呼んだシーンとか、名場面すぎる……!!

あまりにも「東方であること」を示すキーワードが無さ過ぎて、「これは本当に東方の二次創作作品なのか?」という疑問も出るかもしれないですが、私はこれは確かに「東方」だと思います。
まさに「東方の世界で起こりうること」を描いている、と思うのが理由です。

今の東方(紅魔郷から星蓮船まで)だと、人と妖怪のハーフである霖之助が特に迫害されているような描写がないので、現在の東方は人と妖怪が結ばれることはさほどタブーではない、と思います。
で、この小説では、人と妖怪が結ばれることはありえない、ということが前提になっていると思います。なので、この小説はちょっと昔の東方が舞台になっているのかな?
退治に来た巫女は霊夢かな?と思っていたけど、霊夢よりは何代か前の博麗の巫女なのかも。

全体を通して妖怪の娘の一人称で語られていますが、読みやすく、分かりやすいです。
その語り方も、どこか歌を歌っているような、リズムの良さみたいなものがありますね。特に冒頭あたりの「無用、無用~」と言っているあたりは特に歌を歌っているかのようなテンポのよさで、けっこう好きな部分です。

この妖怪の娘が「どんな妖怪か」は全く描写がないですが、上記のように語り口がまるで歌を歌っているかのようなので、自分の中では勝手にミスティアっぽいイメージがあります。

あと、終盤の、妖怪の娘が熊によって深手を負わされ、猟師の男が獲物を探しに行ったシーン。
「なんで、食料を持ってくることにばかりこだわっていて、傷そのものを治そうとしないのだろう?」とずっと不思議に思っていたのですが、今さっき読み返してみて、ようやく気づきました。
妖怪の娘は「傷そのものでは死なないけど、そのうち飢えで死ぬ」という状態だったのですね。だから、猟師は獲物を探しに行った。なるほど、筋が通っています。やっと理解できました。

私は「恋愛」が含まれている話がかなり好きだったりします。
悲恋ではあるけど、その恋愛がメインになっているこの話はかなりのお気に入りです。

by tohotoho2 | 2009-05-10 22:53

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