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東方地霊殿対東方星蓮船外伝 黒谷ヤマメと聖白蓮の身体が入れ替わった!!   

2010年 10月 24日

東方地霊殿
   対
東方星蓮船
外伝
黒谷ヤマメと聖白蓮の身体が入れ替わった!!






現在、妖怪の山にある命蓮寺に住まう尼僧・聖白蓮は人と妖怪が平等な世界を目指すため、日々行動していた。
白蓮は自分の理想を実現するため、幻想郷のいろんな土地に出かけていたが、地上はあらかた行き尽くしたため、今度はまだ行っていない地底に行くことにした。

白蓮は地底に通じる縦穴に飛び込み、地底を目指した。
現在は地底と地上の交流が再会されたとはいえ、地底への道のりが特に整備されたわけでもなく、普通の者が地底に行くにはやや厳しい道のりとなっている。

白蓮は元・人間ではあるが現在は身体強化の魔法を身につけた魔法使いであり、その気になれば強大な力を持つ妖怪や人間をも従えることができる力を持っている。だが、白蓮はその力を私用には使わず、ひたすら理想の世界実現のためだけに使っていた。

地底へ赴くことは白蓮にとってはそれほど難しいことではないが、いかんせん、初めての道であり、いろいろと戸惑うことも多い。狭く、暗がりが多くて視界がききづらいところも多く、その進行スピードはかなり遅いものであった。

「このままでは日が暮れてしまいますね……といっても地底に昼夜の区別はなさそうですが」

今まで徒歩で地底へ向かっていた白蓮だが、その身体が地面を離れ、宙に浮く。

「少し暗いですが、飛んだほうが早く着くでしょう。なんとか今日中に旧都という場所まで着かなければ」

白蓮はヒラヒラした白と黒の服と茶のマントをなびかせながら、宙を飛んで地底への縦穴を下っていった。




白蓮は焦りすぎていた。
宙を飛ばす、少しずつでも歩いていけば、この罠にはかからなかった。



ぼふっっ!

「!?」

宙を飛んでいた白蓮の身体が、突然なにか紐のようなものにひっかかって静止する。

「こ、これは……蜘蛛の糸!?」

見ると、その糸はネバネバとした粘液性の糸でできており、身体に絡んで離すことができない。

「あはは、見事にひっかかったねぇ」

突然声がして、天井から一人の女の子が降りてきた。
身体は上下逆さまになっており、お尻から出している糸で天井からぶら下がっている。

「蜘蛛?いえ……土蜘蛛の妖怪ですね、あなたは」
「んー?そうだよ、あたしは黒谷ヤマメ、土蜘蛛さ。あんたは……あんまりそんな感じはしないけど、尼さんかい?」
「はい、命蓮寺という寺で僧をしております」
「じゃあ、それも今日でおしまいだね。というより、あたしが尼さんになるかな?」
「?どういうことですか?」
「地底ってのはけっこう過酷な環境でね、頑丈な妖怪でも、すぐに身体が痛んでくるんだ。だから、定期的に身体を変えている。今のこの身体も、だいぶガタがきていてねぇ。そこへ、ちょうどあんたがやってきたというわけさ」
「私の身体を奪って、自分の新しい身体とするわけですね。妖怪の中に、そのような術を使う者がいるとは聞いていましたが……」
「そうそう、その一人があたしさ。大丈夫、一方的に奪うだけじゃなくて、ちゃんとこの身体はあんたにあげるよ、さっきもいったとおり、長年使っているからだいぶがたがただけどねぇ」
「やめてくださいって言ったら、やめてくださいますか?」
「いいや、できないねぇ。あたしの巣にかかった、尼さんが悪いのさ」

ヤマメは尻からさらに大量を糸を出し、白蓮の身体をぐるぐる巻きにした。

「さーて、それじゃあ入れ替わらせてもらおうかね」

巨大な白い繭みたいになった「それ」に、ヤマメは自らの身体をも押し込んでいった。
巨大な固まりはドクン、ドクンと生き物のように鼓動を開始し、その鼓動が止んだとき。

バリバリバリッ!!
その巨大な白い固まりが二つに割れ、中から黒谷ヤマメと、聖白蓮が出てきた。

「ぐあああああああっっっっっっ!!」

白蓮のほうは大声で叫び、のどと胸をかきむしってひどく苦しんでいる。
一方、ヤマメのほうは冷静な表情で白蓮を見下ろしている。

「な、なんだこの悪しき障気は……地底の空気だってこれよりよっぽどマシだよ……ぐ、ぐえええええ!」

体内からこみ上げてくる気持ちの悪さに、思わず白蓮は嘔吐してしまう。

「だから、やめたほうがいいと言ったのに……」

ヤマメはかわいそうなものでも見るような、哀れみの目を白蓮に向けている。

「いや、言ってないだろそんなこと……」

白蓮は吐くだけ吐き、自分の嘔吐物で汚れた口の端を手でぬぐいながら、ヤマメに向かってつっこみを入れた。




「私の身体はかつて魔界に封印されていた影響で、未だ魔界の障気に犯されているのです。私はそれを長年浴びていましたし、障気を克服する術も身につけて、それを常時自分に使用しているのですが……全くの他人が私の身体に入って、その障気を浴びたらひとたまりもないでしょう」
「この……アマ!こうなることが分かっていて、なにも抵抗しなかったんだろう!?」
「私だってこうして身体を奪われるという被害にあっているのですから、あなたも同じぐらい被害に遭うべきだと思いませんか?」
「いい性格してるじゃないか……あんた本当に尼さん?」
「私はたしかに尼僧ですが、人間の味方でも、妖怪の味方であるつもりもありません。私が目指すのは、妖怪と人間が平等な世界です」
「へー、そりゃご立派なことだねぇ……うっ、ゴホッ!ちょっと、これ、本気で苦しいんだけど!」
「我慢して下さい。今からその障気を防ぐ術を教えてあげますから」
「えっ……、お、教えてくれるの!?は、早くして!本当に、さっきから苦しいんだ、この身体!」
「今度のこと、反省してくださいね。また同じことをしたら、今度は南無三しますから」
「南無三だかなんだかよく分からないけどなんでもいいから!早くしてーーーーーーっっ!!」



白蓮はヤマメから障気克服の術を教えてもらい、ようやく苦しみから解放された。

「うーっ、げほげほ。あんた、よくこんなの身体に溜めたまま普通でいられるねぇ」
「これは私の犯した罪の証として受け入れているからですよ。あなたも、他人の身体を奪っていたという罪を認め、前に進んでいかなければいけません」
「ふん、やっぱりお坊さんだね、すぐ説教したがる。あたしはこうして生きてきたんだ、すぐには変えられないよ」
「まあ、すぐに変われ、とは言いません。今までのことを、よく考え直してくれるだけでいいんです」

「ところで、私の身体、返してくださいますよね?」
「あーもうー、返してやるよ、こんな身体!」



白蓮はさきほど割れた白い巨大な繭をくっつけ、二人揃って中に入った。
中から二人が出てきたときは、ヤマメと白蓮の身体は元に戻っていた。



「今日はもう遅くなってしまったから、地底行きはまた今度にします」
「あー、そう、さっさと帰ってよ、もう」
「寂しいんですね、あなたは」

白蓮は突然、自分より頭ひとつ背が低いヤマメの頭を抱き、自分の胸におしつけた。

「んぷっ!な、なにするのさ!」
「こんなところで一人で居て、他人の身体を奪うなんて暗いことしているから、寂しい人生を送ることになるんですよ。妖怪も人間も、他者と交わることで成長する。よかったら、私と一緒に命蓮寺まで来ませんか?」
「悪かったね、こんなところで、暗い奴で!……え、なんだって、一緒に?」
「そう、一緒に。私は、ヤマメさんといいお友達になれると思うのですが」
「お、お友達……」

地底の縦穴でずっと暮らしてきたヤマメにはお友達と呼べる存在がいなかった。
白蓮の申し出はヤマメにとって魅力的なものであった。

「いいよっ、私はこれからも一人で生きていくんだ!ほっといてよ!」

「そうですか、残念ですね。命蓮寺は妖怪の山の上にありますから、気が向いたらいつでもいらしてくださいね」

そう言って白蓮はにこりと微笑むと、高く跳躍して遙か上空の足場へと跳んでいった。

「あっ!ちょっと尼さん!」
「はいー、なんでしょうか?」

白蓮は跳躍中に叫びかけてきたヤマメに聞き返した。

「あんたの名前はーーー!?」
「白蓮。聖白蓮ですよ」

「……今度、今度あんたの寺に行ってやるから!待っててよ!」

「……お待ちしていますよ、ヤマメさん」


そう言い残し、白蓮の姿はだんだん小さくなり、やがて見えなくなった。



「さっき抱きしめられたときの気持ちいい感じ、お母さんみたいだったな……」

ヤマメはさきほどの白蓮の感触を思い出し、少しだけ、顔に笑顔を浮かべていた。

「しょうがないな、今度その命蓮寺とやらに、遊びにいってやるか!」



地底に向かってどこまでも闇が広がる縦穴に、黒谷ヤマメの、どこか嬉しそうな声が響いていた。







完。

by tohotoho2 | 2010-10-24 17:51 | 東方入れ替わり小説

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