東方香霖堂外伝 名無しの本読み妖怪と上白沢慧音の身体が入れ替わった!!
2010年 11月 05日
名無しの本読み妖怪と上白沢慧音の身体が入れ替わった!!
名無しの本読み妖怪こと朱鷺子は、本を読んでいたところ博麗霊夢に不意打ちされ、本を奪われてしまった。
そしてその本は流れに流れて、現在は古道具屋『香霖堂』の主・森近霖之助の元にある。
朱鷺子は奪われた本を取り返すべく、何度も何度も香霖堂を訪れていたが、霖之助は「これは僕のものである」と主張して譲らなかった。
朱鷺子は、なんとかして本を取り返す方法がないか、考えていた。
そんなある日。
朱鷺子は森の中を歩いて、香霖堂へと向かっていた。
今日はどんな方法であの店主に交渉してやろうか……
そのことばかりに集中していて、周りを見る余裕がなかった。
そのため、突然木の陰から飛び出してきた人物にも気づかなかった。
「うわぁっ!?危ない!」
そう叫んだその人物は、朱鷺子に向かってすごい勢いで突進してきていた。
「え!?」
ふと我に返った朱鷺子が声のするほうを向くと、変わった形の帽子をかぶった青い髪の人物の頭が見え……
次に、頭の骨が砕けるんじゃないか、というほどの衝撃を頭に受け、朱鷺子は気を失った。
「うーん……」
朱鷺子は目を覚まし、痛む頭を押さえながらフラフラと立ち上がった。
「な、なんだったのかしら今の……イノシシかなにかかしら」
頭がズキズキして意識がはっきりしない朱鷺子は、近くに泉があったことを思い出し、そこで顔でも洗って意識をすっきりさせようとし、さっそく泉に向かって歩き出した。
すぐ近くに朱鷺子そっくりの人物……いや、朱鷺子その人が倒れていることにも気づかずに。
「きゃーーーーーっっ!?何これ!?」
泉で顔を洗おうとした朱鷺子は、水面に映る自分の顔を見て驚いた。
「誰これ、私じゃない!?どうなってるのよこれ……」
水面に映っているのは見慣れた自分の顔ではなく、知らない女性の顔だった。
よく見ると、服装も全く違うし、体つきもずいぶん大人っぽくなっている。
「あれ……そういえばこの顔の人、見覚えがあるような……そうだ、寺子屋で先生やっている人だ!」
慧音が開いている寺子屋は基本的に人間の子供を相手にしているが、読書好きでもある慧音はたまに読書好きの妖怪のために、妖怪だけの読書会を開いている。同じく本好きの朱鷺子はその読書会の噂を聞き、何度か参加したことがあった。
「名前はたしか上白沢……慧音、だっけ。でもなんで私がその人の顔になってるの!?わけが分からないわ……」
とりあえず朱鷺子は、いや慧音は泉の水で顔をバシャバシャと洗った。
すっきりしたが、水面を覗き込んでも、そこに映っているのは朱鷺子ではなく慧音の顔だった。
「うーん、どうしよう……あれ、でもこれって、チャンスなんじゃ……」
慧音の体になっている朱鷺子は思った。
「『私』だから、あの店主にもナメられるのよ!私じゃない、全く新しいお客様の『上白沢慧音』の私なら、あの店主も少しは言うことを聞いてくれるんじゃないかしら!
これは、本を奪還するいいチャンスだと思い、慧音の中の朱鷺子は、さっそく元の道に戻り、香霖堂を目指した。
一方、朱鷺子の体になった慧音は。
「な、なんだこれは!?体が私のものではなくなっている……!?」
自分の顔や体をぺたぺたと触っては、驚いている。
「明かに私の身体じゃない……誰かと体が入れ替わってしまったというのか?こんなことは本の中の出来事だとばかり思っていたが……」
近くに鏡はないが、触っているうちに、だいぶ今の自分の身体的特徴が分かってきた。
「羽が生えていて、この髪、この服装……見覚えがあるぞ、たしか私が開いた読書会に何回か来ていた妖怪の子だったと思うが……名前までは思い出せないな」
さっきまでは頭がズキズキしていたが、しばらく休んでいたら頭痛はだいぶ治まってきた。
「元の私も見あたらないし……困ったことになったな。これ以上ここに居てもしかたない……」
慧音は、いや朱鷺子は香霖堂のほうへと歩きだそうとした、その時。
「あー!あの、後ろから弾撃ってきた妖怪!!」
慧音の、知っている声がした。振り返ると、紅白の巫女服を着た博麗霊夢が険しい顔をして立っていた。
「まだこのあたりをうろちょろしていたの?いい機会だわ、徹底的に退治してあげる!」
霊夢は札と針を取り出して攻撃してきた。
「うわ、ま、待て、人違いだ霊夢!」
「あんたに名前で呼ばれる筋合いはないわ!」
針とお札を躱された霊夢は次に夢想封印を撃った。
「きゃあああああああ!」
どーーーーん!!
森の中に、爆発音と朱鷺子の叫び声がこだました。
by tohotoho2 | 2010-11-05 21:11 | 東方入れ替わり小説