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人比良様 『逢魔ヶ境で夢を見る』   

2011年 04月 23日

四面楚歌

「人比良」様のサイトはこちら。



東方創想話
第3回東方SSこんぺ
『フォーン・ブースへ散歩に行こう』
作者「人比良」様



昨日の記事で感想を書いた、人比良様の作品『フォーン・ブースへ散歩に行こう』。メリーと紫の入れ替わりを描いたこの作品には、なんと続編がありました。
第13回東方創想話読書会の中で、その続編に関する情報が載っていました。


東方SS読書会 @wiki


東方創想話の作品について語り合う企画『東方SS読書会』のまとめwikiはこちら。




『フォーン・ブースへ散歩に行こう』の続編が掲載されいる同人誌のタイトルは『逢魔ヶ境で夢を見る』。人比良様のサイトによると、
>2007/12/31 コミックマーケット73にて頒布。
だそうです。
「とらのあな」や「駿河屋」で通販も行われていたみたいですが、かなり前の本なので、現在は全て売り切れです。同人誌という、時期を逃せばもう一生手に入らない媒体ということで、もうかなりあきらめていました。
そして今日、読書会の続きを見ていたら……なんと、作者の人比良様が、ネット上に『逢魔ヶ境で夢を見る』をアップしてくださいました!こ、これはぁ!めちゃくちゃ嬉しいです!!もう見られない……と思っていた矢先に、ネット上にアップとのご報告が!!人比良様のご好意に、ひたすら大感謝です!
人比良様、ありがとうございました!!



『逢魔ヶ境で夢を見る』

直リンしてしまいますが……『フォーン・ブースへ散歩に行こう』の続編、『逢魔ヶ境で夢を見る』はこちらで読むことが出来ます!


『逢魔ヶ境で夢を見る』の感想は下↓に。











感想。

『フォーン・ブースへ散歩に行こう』が、それだけで完結している、まとまった作品だったので、続編がある、と知ったときにまず驚きました。
メリーの身体になった紫が、その後なにをするかは完全に読者の想像に委ねている、と思っていたので、「その後どうなったか」について詳細に書かれていたことに驚き。

むちゃくちゃ続きが気になっていたので……まずはザーッと先に全体を読んでみました!
廃墟巡りをしている蓮子とメリー。うおおおお、この廃墟のシーンに出ているメリーは、全て「紫の精神が入っているメリー」だと思うと、もうメリーの名前が出てくるだけで興奮します。紫……完璧にメリーになりきっているなぁ。ここまで完璧にメリーを演じることができるということは、人間関係も含めて、紫はメリーのことを完全に知り尽くしているということですよね。口調とかも完全にメリーになっているし。どういう経緯で紫がメリーのことを知るようになったのか、そういうところも気になりますね。

基本的に紫は完璧にメリーを演じていて、紫らしさを出すようなシーンはほぼ皆無なのですが……かぐや姫について語るシーンで、なぜかメリーが笑い出すところは、かなり紫の地が出ている気がしますね。なんといっても紫はかぐや姫=輝夜のことを直接知っていますし。知っている人物についてそんな風に言われたら、そりゃ笑いたくなる気持ちも分かります。

結局、廃墟探検の間じゅうと、汽車に乗って帰途につくところまで、蓮子はメリーの中身について気づくことはないのですよね。これはこれでいい感じ。入れ替わりもので、本人になりすましている場合は、「いつ周りの人に正体がばれるか」が楽しみだったりするのだけど、この話では、逆にずっとバレないことで、面白みが増していると思います。一番メリーと付き合いが深い蓮子でさえ、メリーの中の紫に気づかない。それだけでも、入れ替わりものとしては面白い。バレないということは、それだけずっと「入れ替わっている状態」が長く続くわけですからね。それに、正体がばれるようなボロを出してしまうと、要するにそれは紫の「失敗」になってしまうわけで、常に怪しく、なにを考えているか分からない紫が、急に俗っぽく、人間臭くなってしまって、紫の株を落とすことになってしまいます。

導入部分の『フォーン・ブースへ散歩に行こう』でも、紫がなにを考えているか分からないところが魅力だったし、それはこの続編部分でも変わりません。終始、完璧にメリーを演じているから、紫は紫らしいし、読者のほうも長く入れ替わり状態を見続けていられるわけです。

で、「どうやって二人の身体が元に戻るのか」。これがかなり気になっていました。……いつの間にか、元に戻っていたみたいですね。メリーが紫に乗っ取られるところはかなり詳細に書かれていたのですが、逆に元に戻るシーンは描写すらなくて、これはちょっと残念。でも、そもそも、蓮子とメリーが廃墟探索に行っていたこと自体、夢か幻だったんじゃないか、という感じで描かれていたので、その幻想的なイメージを崩さないために、あえて元に戻るシーンは書かなかったのだと思います。じっくり書いてしまったら、それだけ現実味が増してしまって、「あれは夢だったんじゃないか?」みたいな感じは出せないと思います。

んー、メリーは……紫に乗っ取られていた間は、記憶が無いのかー。さらに、紫が勝手にメリーの身体で遊園地で遊んでいたりした間のことも、メリー自身は覚えていないわけで。これはもう本当に、「入れ替わり」というよりは「憑依」や「乗っ取り」ですね。片方の意識が完全に無いか、眠っている状態みたいなので。
たぶん作者様は、紫がメリーに成り代わることを「入れ替わります」と表現したのだと思う。紫が、メリーになる。ん、たしかに、言葉の上ではそれも「入れ替わる」といっていいと思います。

しかし、私のような入れ替わり好きからして見ると、それはちょっと違うのですよね。「入れ替わります」というからには、紫がメリーになったのなら、メリーは紫になっていないといけない。お互いに、相手の姿になるからこそ「入れ替わり」という。片方の描写しかないようであれば、それは「入れ替わり」ではない。憑依とか乗っ取りという表現を使うべき。
んー、でも、「入れ替わり」にそれほどこだわりの無い方に、そこまでの言葉の使い分けを強要するのもどうかと思いますし。私のように、そこまで細かいジャンル分けにこだわるほうが少数派でしょうし。そこはまぁ、サラッと流していい部分だと思います。


それにしても、「メリーになりすまして蓮子と一緒に行動する」ことだけが紫の目的かと思ったら、他に遊園地で遊んだりしていたことに驚き。紫でも、そんな風に無邪気に遊びたいことってあるんですねぇ。それはそれで、ちょっと可愛い。橙たちへ、お土産を買う目的も兼ねていたのかもですが。


紫の身体は……やっぱり幻想郷にあって、意識だけ、外の世界のメリーの中に入っていたみたいやね。その間、紫の身体は布団の中でずっと寝ていたらしい。紫がメリーになっている間、メリーの意識は紫の中に入っていたかもしれないけど、強制的に眠らされていたのかもですね。



メリーは、遊園地で遊んだりした記憶は無い。でも、身体はまるでそれが本当にあったかのように疲れている。まぁ実際、身体を乗っ取られていたみたいですが。記憶はないけど、身体の疲れだけは残っている、というのがリアル。入れ替わりものって、ぶっちゃけてしまうと空想の産物ですが、それでもどこかに現実味を感じさせる描写があると、読んでいる側としても感情移入して読むことができますね。



遊園地に行ったあたりのことは、日付についての言及がないのでいつ頃の事か分かりません。廃墟探索が終わってメリーの身体の紫が蓮子と別れて、その後に遊園地に向かったのかな。廃墟探索の後、一旦入れ替わりを解いて、また入れ替わった、なんて面倒なことはしないでしょうし。ずっと入れ替わっていた、と考えるほうが良さそうですね。


身体を乗っ取られていた、という重大な事態があったけど、蓮子はまぁ、写真にメリーが写っていないことをちょっと不思議に思ったぐらいだし、メリーはメリーで、遊園地の件についても深く疑問に思ったりしていない。日付が変わった途端、蓮子は元気を取り戻し、また次の活動に向かう。それに付き合うメリー。変に過去の体験にとらわれたりせず、ひらすら未来に向かって突き進んでいる、蓮子とメリーを見ていると、気持ちが明るくなってきますね。また紫がイタズラみたいなことするかもしれないですが、蓮子とメリーの二人なら、なにが起こっても大丈夫そうです。



あとがきっぽいシーン。おお、幻想郷での紫が実際に出てくるとは……。ここでも、徹底的に個人名が伏せられていますね。最後の最後、ラストの紫の台詞とか、めっちゃ意味深です。他人になりすぎたりして、紫自身、自分が誰なのか分からなくなっている!?スッキリしたラストではない、でも心に残るもやもやしたものは、決して悪い感じのものではない。

続編のほうはけっこうな長編ではありますが、それでもスラスラと読むことができました。メリーも無事、自分に戻れたみたいで、疑問も解決して個人的にスッキリしました。メリーになりすまして、蓮子と秘封倶楽部の活動を行う紫。実に、実に良いシチュエーションでした!!
この作品に出会わせていただいた、作者の人比良様に、改めて大感謝です!ありがとうございました!!

by tohotoho2 | 2011-04-23 21:19

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